使命と挑戦

街が寝静まった深夜2時。
ひのとり、しまかぜ、
伊勢志摩ライナー、
アーバンライナーが行き交う
昼間の喧騒が嘘のような場所で
私はレールを支える
石を突き固めている。
直接お客様の顔を
見る機会はないまま
今日の仕事は
終わっていってしまう。
けれども、朝になったら
この場所を何百本もの電車が走り、
何百万人のお客様が駆け抜けていく。
安全への使命感に体が震えた。
列車の整備・送電の管理・
建物の保守など
お客様の目に映らなくても、
鉄道運行を支える仕事は多岐にわたる。
今この瞬間も私たちが
安全を支えているのだ。

「ショックなくピッタリ止める」
師匠が常に言っていた言葉だ。
大阪難波～奈良、
京都～橿原神宮前等を
担当する運転士である私は
快適な乗り心地の追求こそが
使命だと思っている。
ふと気づくと運転台の後ろに
小さいお子さんが
かぶりつくように
してこちらを見ている。
数駅後にそのお子さんが
「運転士さんバイバイ」と
手を振って降りていった。
お客様の命を預かり快適に
目的地まで送り届ける日々の合間で
夢を乗せて誰かの憧れになれる瞬間がある。
改めてこの仕事が好きになった。

私が働くこの街は
私にとっての
「大好き」がつまっている。
路線図で続いている街たちも
きっと「大好き」に
あふれているのだと思う。
大阪、名古屋、京都から奈良、
伊勢志摩、吉野へと
広大なエリアにわたる
近鉄のどの街も
もっと好きになってほしいし、
好きをもっと広めたい。
そんな思いを持って街の声、
お客様の思いを聞き取る。
輝く未来に思いを馳せ、
知能を結集していく。
まだ見ぬ未来が
ワクワクするものになるように。
この街で働き住む人たちが
笑顔になるように。
訪れる人たちの
お気に入りの場所になるように。
私は今日も大好きな
この街を見つめていく。